「親の介護をしながら転職活動はできるのか」「介護のことを面接で伝えると不利になるのではないか」「今の会社を辞めてから、両立しやすい仕事を探すべきか」と迷っていませんか。
結論からいうと、介護をしながら転職することは可能です。ただし、先に退職してから働き方を考えるのは避けた方が安全です。介護休業は、家族の介護をすべて自分で担う期間ではなく、介護サービスや家族の分担を整え、仕事を続けられる体制を作るための期間です。まず現職で使える制度と異動の可能性を確認し、それでも両立が難しい場合に転職条件を具体化します。
また、転職直後は制度によって利用条件が変わります。新しい会社が労使協定を締結している場合、入社1年未満の労働者は介護休業や短時間勤務等の対象外になることがあります。「介護支援制度あり」という求人の一文だけで判断せず、入社直後から何を利用できるかまで確認することが重要です。
本記事では、2026年9月時点の厚生労働省の情報をもとに、介護離職を避ける判断順序、転職先の選び方、応募先への伝え方、面接の確認質問、介護休業・介護休暇などの制度を解説します。
目次
- 介護しながら転職することはできる?
- 転職前に「退職しない選択肢」を確認する
- 介護と仕事の両立に使える制度一覧
- 2025年4月から強化された介護離職防止策
- 転職直後は使えない制度がある点に注意
- 転職活動前に介護の予定を見える化する
- 介護と両立しやすい求人を選ぶ8項目
- 求人票で確認したい表現と注意点
- テレワーク求人なら介護と両立できるとは限らない
- 介護の事情は応募先へいつ・どこまで伝える?
- 介護中の転職面接で使える質問例
- 志望動機・転職理由・空白期間の伝え方
- 介護しながら転職活動を進める手順
- 内定承諾前に労働条件を書面で確認する
- 介護休業給付金と転職前後の収入を確認する
- 仕事と介護を両立する相談先
- 介護しながらの転職に関するよくある質問
- 公的情報・相談先
- まとめ
介護しながら転職することはできる?
介護中でも、働ける時間、対応できない勤務、緊急時の代替手段が整理できていれば転職は可能です。転職を成功させるポイントは、「介護があるかどうか」ではなく、どの勤務条件なら継続して働けるかを具体化することです。
転職活動へ進む前に、次の3点を確認してください。
- 現在の会社で介護休業、介護休暇、残業免除、短時間勤務、異動を利用できないか
- 自分が担当しなければならない介護と、家族・介護サービスへ任せられる対応を分けられているか
- 転職先に求める条件を「必須」と「希望」に分けられているか
| 状況 | 優先する選択肢 | 理由 |
|---|---|---|
| 介護が始まったばかりで予定が読めない | 現職の介護休業や有給休暇で体制を整える | 勤務条件を決める前に退職すると、次の仕事でも同じ問題が起こりやすい |
| 勤務時間だけが両立の障害 | 短時間勤務・時差出勤・残業免除・社内異動を相談 | 収入、勤続年数、制度利用資格を維持しやすい |
| 転勤・夜勤・出張が避けられない | 条件を限定して在職中に転職活動 | 現職の制度だけでは勤務の構造を変えられない場合がある |
| 心身の負担が大きく就業継続が難しい | 家族・地域包括支援センター・医療機関・会社へ早めに相談 | 一人で転職活動まで抱えると判断力と体調を崩しやすい |
「介護を理由に辞める」前に、「介護を理由に働き方を変えられないか」を確認しましょう。退職は、両立制度、収入、社会保険、勤続年数を同時に手放す判断です。
転職前に「退職しない選択肢」を確認する
介護に直面すると、「会社へ迷惑をかける前に辞めよう」と考えがちです。しかし、介護の予定が固まっていない段階で退職すると、必要な勤務条件を定められないまま転職先を選ぶことになります。
最初に人事・総務または社内相談窓口へ、次の内容を確認してください。
- 介護休業と介護休暇の申請方法
- 介護休暇が有給か無給か
- 短時間勤務、フレックス、時差出勤のうち利用できる制度
- 所定外労働の制限や時間外労働の制限
- テレワークの対象職種と利用日数
- 夜勤・出張・転勤のない部署への異動可能性
- 会社独自の介護費用補助、積立休暇、休職制度
2025年4月以降、家族の介護に直面したと申し出た労働者に対し、会社は介護休業や両立支援制度、申出先、介護休業給付金を個別に周知し、制度利用の意向を確認する必要があります。制度を尋ねること自体を遠慮する必要はありません。
配置転換で就業場所が変わり、家族の介護が難しくなる労働者がいる場合、事業主には介護の状況へ配慮する義務もあります。転勤命令が一律に無効になるわけではありませんが、本人の事情と希望を具体的に伝えることが重要です。
介護と仕事の両立に使える制度一覧
育児・介護休業法には、長く休む制度だけでなく、通院の付き添い、残業回避、勤務時間変更に使える制度があります。
| 制度 | 主な内容 | 活用場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 介護休業 | 対象家族1人につき通算93日、3回まで | 介護サービス契約、施設検討、家族分担の構築 | 原則として開始予定日の2週間前までに申出 |
| 介護休暇 | 対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日。1日または時間単位 | 通院付き添い、手続き、ケアマネジャーとの面談 | 有給か無給かは会社規定による |
| 短時間勤務等 | 短時間勤務、フレックス、時差出勤、介護費用助成等から会社が1つ以上を整備 | 日常的な送迎、朝夕の介助 | 会社がすべての選択肢を用意する義務ではない |
| 所定外労働の制限 | 請求した期間の所定外労働を免除 | 定時退社が必要な場合 | 原則として開始予定日の1か月前までに請求 |
| 時間外労働の制限 | 時間外労働を月24時間、年150時間以内に制限 | 一定範囲の残業は可能だが長時間労働を避けたい場合 | 所定外労働の制限とは上限と対象が異なる |
| 深夜業の制限 | 午後10時から午前5時までの勤務を制限 | 夜間に家族の見守りが必要な場合 | 同居家族の状況などにより対象外となる場合がある |
| 介護目的のテレワーク | 選択できるよう会社が制度導入に努める | 通勤時間を減らし、緊急時に対応しやすくする | 努力義務であり、すべての会社で利用できるとは限らない |
対象家族は、配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母です。育児・介護休業法上の「要介護状態」は、負傷、疾病、身体上または精神上の障害により、2週間以上にわたって常時介護を必要とする状態を指します。
介護保険の要介護認定を受けていることが必須とは限りません。家族が要介護認定前であっても、状態が基準に該当する可能性があるため、会社へ相談してください。
短時間勤務等については、会社が選んだ措置を、対象家族1人につき利用開始日から連続する3年以上の期間に2回以上利用できるようにする必要があります。ただし、介護費用の助成措置は1回とすることが認められています。
介護休業は「自分だけで介護する期間」ではない
厚生労働省は、介護休業を仕事と介護の両立体制を整える準備期間として活用するよう案内しています。休業中に行うことは、介護サービスの手配、地域包括支援センターへの相談、家族の役割分担、緊急時の連絡ルートづくりです。
93日をすべて身体介護へ使うと、復職後に同じ負担へ戻ってしまいます。休業終了後にも回る体制を作ることが、介護離職を避ける目的です。
2025年4月から強化された介護離職防止策
2025年4月1日から、介護離職防止のための企業の対応が強化されました。2026年現在、主に次の内容が適用されています。
- 介護休業・両立支援制度を利用しやすくする雇用環境整備
- 介護に直面したと申し出た労働者への個別周知と意向確認
- 40歳前後の労働者への早期の情報提供
- 継続雇用6か月未満の労働者を介護休暇の対象外にできる仕組みの廃止
- 介護を行う労働者がテレワークを選べるようにする措置の努力義務化
雇用環境整備では、会社は研修、相談窓口、利用事例の収集・提供、利用促進方針の周知のうち、少なくとも1つを行う必要があります。
ただし、法改正があっても「希望すれば必ず在宅勤務できる」「すべての介護制度が入社初日から使える」という意味ではありません。法定制度、会社独自制度、利用条件を分けて確認しましょう。
転職直後は使えない制度がある点に注意
介護中の転職で見落としやすいのが、勤続期間による利用制限です。現職では利用できる制度でも、新しい会社へ移ると一時的に対象外になる可能性があります。
| 制度 | 入社直後の注意点 | 応募・内定時に確認すること |
|---|---|---|
| 介護休業 | 労使協定により継続雇用1年未満を対象外にできる | 入社1年未満の除外規定があるか |
| 短時間勤務等 | 労使協定により継続雇用1年未満を対象外にできる | 利用開始時期と選べる勤務制度 |
| 所定外労働の制限 | 労使協定により継続雇用1年未満を対象外にできる | 残業免除の対象者と申請期限 |
| 時間外労働・深夜業の制限 | 継続雇用1年未満は対象外となる場合がある | 夜勤・残業の実態と会社独自の配慮 |
| 介護休暇 | 2025年4月以降、勤続6か月未満を理由とする除外は廃止 | 週の所定労働日数による除外、有給・無給の扱い |
| 会社独自制度 | 試用期間中や勤続年数による制限を設けている場合がある | 就業規則上の対象者、申請方法、利用実績 |
介護が不安定な時期ほど、転職前後の制度の空白が大きなリスクになります。現職で介護休業を使って体制を整えてから転職する方法も検討してください。
転職活動前に介護の予定を見える化する
「介護があるので残業できない」という曖昧な条件では、応募できる求人を必要以上に狭めてしまいます。1週間と1か月の介護予定を表にし、必要な配慮を具体化します。
| 介護対応 | 頻度・時間 | 現在の担当 | 代替手段 |
|---|---|---|---|
| 朝の服薬・食事確認 | 平日7時〜8時 | 本人 | 訪問介護、同居家族 |
| 通院付き添い | 月1回、半日 | 本人 | 家族分担、介護タクシー |
| ケアマネジャーとの面談 | 月1回、1時間程度 | 本人 | オンライン・電話対応の相談 |
| 急な体調悪化 | 時期不定 | 本人 | 家族、事業所、緊急連絡先 |
次に、転職条件を3段階に分けます。
- 必須条件:満たせなければ勤務継続が難しい条件
- 希望条件:あれば負担が減るが、他の制度で代替できる条件
- 妥協可能:年収、役職、業界など優先順位を下げられる条件
たとえば、「完全在宅勤務」を必須にする前に、「週2日在宅+フレックス+自宅から30分以内」でも両立できないか検討します。条件を機能で捉えると、応募先を広げながら継続可能性を保てます。
介護と両立しやすい求人を選ぶ8項目
1.実際の始業・終業時刻
求人票の所定時間だけでなく、朝礼、着替え、終業後の報告、顧客対応を含めた実態を確認します。デイサービスの送迎時刻や訪問介護の時間に間に合うか、通勤時間も含めて判断してください。
2.月平均残業と繁忙期の最大残業
平均残業が少なくても、特定の月だけ深夜まで働く職場では両立できない場合があります。部署別の残業、繁忙期、突発対応の頻度まで確認します。
3.フレックス・時差出勤の利用条件
制度があっても、試用期間中は利用不可、コアタイムが長い、部署の承認が必要というケースがあります。入社直後から利用できるかを確認しましょう。
4.テレワークの実際の利用状況
「在宅勤務可」だけでなく、週何日か、曜日を選べるか、緊急時に切り替えられるか、居住地の制限があるかを確認します。
5.介護休暇と会社独自休暇
法定の介護休暇が有給か無給か、時間単位で使えるか、積立有給休暇や特別休暇があるかを確認します。
6.夜勤・出張・休日対応
募集時点では日勤でも、配属後に夜勤や全国出張が発生する職種があります。頻度、断れる条件、代替要員の有無を確認してください。
7.転勤・配属変更の範囲
勤務地限定正社員、エリア職、転勤なしの区分があるかを確認します。「当面転勤なし」は将来の転勤可能性を残す表現です。
8.急な休みを支える業務体制
個人しか分からない業務が多い職場では、制度があっても休みにくくなります。チーム制、複数担当制、業務マニュアル、代理承認の仕組みがある職場は突発対応に強い傾向があります。
求人票で確認したい表現と注意点
| 求人票の表現 | 確認したいこと | 判断上の注意 |
|---|---|---|
| フレックスタイム制 | コアタイム、清算期間、入社直後の利用可否 | 自由に勤務時間を短くできる制度ではない |
| リモートワーク可 | 利用日数、対象部署、出社命令、試用期間の扱い | 「可」が常時利用を意味するとは限らない |
| 残業月10時間程度 | 部署別実績、繁忙期、固定残業代の有無 | 平均値だけでは最大負担が分からない |
| 転勤なし | 雇用区分、就業場所の変更範囲 | 出張や近隣拠点への異動は別に発生する場合がある |
| 介護支援制度あり | 法定制度以外の内容、利用条件、給与の扱い | 法定制度を記載しているだけの場合がある |
| シフト応相談 | 希望提出時期、固定曜日、急な変更の頻度 | 毎月希望どおりになるとは限らない |
| 勤務地限定 | 限定範囲、解除条件、昇格・給与への影響 | 地域内の複数拠点へ異動する可能性がある |
制度名の多さより、実際に使える時期と利用実績を重視してください。面接担当者が詳細を把握していない場合は、内定後に人事へ確認します。
テレワーク求人なら介護と両立できるとは限らない
テレワークは通勤時間を削減できるため、介護との両立に役立ちます。ただし、勤務時間中は仕事へ集中する必要があります。会議中に身体介護をする、常時見守りながら顧客対応をするなど、就業と介護を同時に行う前提では長続きしません。
在宅勤務を希望するときは、次のように役割を分けます。
- 勤務時間中の身体介護・見守りは、訪問介護、通所サービス、家族が担当する
- 昼休みや始業前後に、自分が必要な確認を行う
- 急変時の連絡先と、仕事を中断する基準を家族・事業所と決める
- 会社のテレワーク規程で、就業場所や家族対応のルールを確認する
介護サービスがない状態をテレワークだけで埋めようとすると、仕事の評価と介護の安全の両方が不安定になります。求人選びと同時に、地域包括支援センターやケアマネジャーへ働き方の希望を伝え、ケアプランを調整しましょう。
介護の事情は応募先へいつ・どこまで伝える?
応募先が判断したいのは、家族の詳しい病名より、募集されている仕事を継続して遂行できるか、勤務上どのような調整が必要かです。伝える場合は、介護の詳細を広げすぎず、勤務への影響と対策をセットにします。
| 状況 | 伝える時期の目安 | 伝える内容 |
|---|---|---|
| 通常勤務でき、現時点で特別な調整が不要 | 制度確認は一般的な質問として行う | 勤務条件を確認し、必要になった時点で社内窓口へ相談 |
| 入社直後から時差出勤・固定曜日の休みが必要 | 面接中から内定承諾前まで | 必要な曜日・時間、頻度、対応可能な勤務範囲 |
| 夜勤・転勤・出張を受けられない | 職務条件を確認する面接段階 | 対応できない条件と、代わりに対応できる業務 |
| 介護状況が変わりやすい | 選考中に現時点の事実を伝え、内定時に再確認 | 現行の体制、緊急時の代替、今後相談する可能性 |
伝え方の例
家族の介護がありますが、平日の日中は介護サービスと家族の分担体制を整えており、通常の勤務時間は問題なく就業できます。月1回程度、通院の付き添いで時間単位の休暇を相談する可能性があります。入社直後の休暇制度と申請方法を確認させていただけますでしょうか。
「介護があるので配慮してほしい」だけでは、企業は必要な対応を判断できません。通常勤務できる時間、難しい業務、発生頻度、代替手段を具体的に伝えます。
反対に、入社直後から利用したい勤務条件があるのに「何も問題ない」と説明すると、入社後に双方の認識がずれます。内定承諾前までに、継続勤務へ不可欠な条件を確認してください。
介護中の転職面接で使える質問例
最初から「介護している人は休みやすいですか」とだけ聞くより、業務運営と制度の両面から確認すると、具体的な回答を得やすくなります。
- 配属予定部署の通常期と繁忙期の残業時間を教えていただけますか。
- 突発的な欠勤が発生した場合、チーム内ではどのように業務を引き継いでいますか。
- フレックスタイム制は、試用期間中や入社直後から利用できますか。
- テレワークは月・週に何日利用されており、曜日変更は可能ですか。
- 介護休暇は時間単位で取得できますか。また、有給・無給のどちらですか。
- 介護のための短時間勤務等について、入社1年未満の除外規定はありますか。
- 夜間や休日の緊急対応は、月にどの程度発生しますか。
- 出張の期間と頻度、代替対応の仕組みを教えていただけますか。
- 勤務地変更の可能性と、就業場所の変更範囲を教えてください。
- 仕事と介護の両立について相談できる部署や窓口はありますか。
すべてを一度に質問する必要はありません。自分の必須条件に関わる3〜5項目を選び、仕事内容への質問と組み合わせます。
志望動機・転職理由・空白期間の伝え方
志望動機は介護だけを理由にしない
「介護と両立できそうだから応募した」だけでは、その会社で働く理由と活かせる経験が伝わりません。志望動機は、経験、応募先で実現したい仕事、継続可能な働き方の順で組み立てます。
現職では法人顧客への提案と既存顧客のフォローを担当し、業務改善を含めた継続提案に強みを培ってきました。今後はこの経験を活かし、チームで顧客課題を解決する貴社の営業体制で専門性を高めたいと考えています。家族の介護についてはサービスと家族の分担を整えており、募集要項の勤務時間で継続して勤務できる見込みです。
転職理由は「両立できない会社への不満」で終わらせない
現職の批判より、長期就業のために必要な条件と、応募先で貢献できることを伝えます。
家族の介護が始まり、全国転勤と長期出張を前提とする現在の働き方では、長期的な就業継続が難しいと判断しました。介護体制を整えたうえで、これまでの業務経験を活かしながら勤務地を限定して中長期的に成果を出せる環境へ移りたいと考え、転職活動を始めました。
介護離職後の空白期間は、現在の就業可能性を示す
介護のためにすでに退職している場合は、空白期間を隠す必要はありません。退職後に行ったことと、現在働ける状態になった根拠を説明します。
退職後は家族の介護サービス導入と住環境の調整を行いました。現在は平日日中のサービス利用と家族の分担が決まり、通常勤務できる体制が整っています。空白期間中も業界情報の確認と資格学習を続け、復職に向けた準備を進めてきました。
「もう介護の問題は起きません」と断言する必要はありません。現時点の体制と、状況が変わったときの相談・代替方法を説明する方が現実的です。
介護しながら転職活動を進める手順
ステップ1:地域の相談先と介護サービスを確保する
地域包括支援センター、市区町村の介護保険担当課、ケアマネジャーへ、自分の勤務時間と転職希望も含めて相談します。介護の状況だけでなく、「平日9時から18時まで働きたい」と伝えることで、働き方を踏まえたケアプランを検討しやすくなります。
ステップ2:現職で使える制度を確認する
就業規則と人事への確認により、退職以外の選択肢を洗い出します。制度を利用したことを理由とする解雇、雇止め、降格などの不利益な取扱いは禁止されています。
ステップ3:必須条件を3つ以内に絞る
「転勤なし」「17時30分までに退社」「月1回の通院付き添い」など、介護継続に直結する条件を絞ります。希望条件を増やしすぎると、仕事内容や年収の選択肢が極端に狭くなります。
ステップ4:在職中に求人を比較する
求人票だけでなく、企業サイトの就業規則に関する案内、採用情報、両立支援の事例を確認します。制度が多い企業でも、希望職種で利用できるとは限りません。
ステップ5:応募書類は仕事の実績を中心に作る
履歴書や職務経歴書の中心は、経験、担当業務、成果、再現できる強みです。介護事情は、空白期間の説明や勤務条件の確認が必要な範囲で記載・説明します。
ステップ6:面接と内定後面談で条件を確認する
面接では業務実態、内定後は制度の利用条件を確認します。口頭回答だけでなく、勤務地、勤務時間、職務、転勤の範囲などは労働条件通知書でも確認してください。
ステップ7:退職日と入社日の間に体制を再点検する
新しい勤務時間に合わせ、介護サービス、送迎、緊急連絡先、家族分担を試します。可能であれば、入社前に実際の時間帯で1週間程度運用し、問題点を洗い出します。
内定承諾前に労働条件を書面で確認する
介護と両立するための条件は、採用担当者の「配慮できます」という言葉だけで決めないことが重要です。内定承諾前に、労働条件通知書と会社の説明を照合します。
- 就業場所と変更の範囲
- 従事する業務と変更の範囲
- 始業・終業時刻、休憩、時間外労働
- 休日とシフトの決定方法
- 試用期間中の勤務条件
- 固定残業代の時間数
- テレワーク・フレックスの利用開始時期
- 勤務地限定や転勤なしの扱い
介護制度の詳細が労働条件通知書へ記載されない場合は、就業規則の該当箇所や人事の書面回答を確認します。希望条件が会社の制度ではなく個別合意である場合は、認識違いを防ぐため書面化を相談してください。
介護休業給付金と転職前後の収入を確認する
雇用保険の被保険者が一定の要件を満たして介護休業を取得した場合、介護休業給付金の対象になることがあります。支給額は原則として、休業開始時賃金日額に支給日数を掛けた額の67%相当です。対象家族1人につき、通算93日を限度に3回まで支給対象となります。
ただし、会社から支払われる賃金額、休業中の就業日数、雇用保険の加入期間などによって、支給の有無や金額が変わります。申請は原則として会社を経由して行うため、会社とハローワークへ確認してください。
転職前には、少なくとも次の収支を比較します。
- 現職で介護休業・短時間勤務を利用した場合の手取り
- 転職後の基本給、賞与、固定残業代、交通費
- 介護休暇が無給の場合の減収
- デイサービス、訪問介護、介護タクシーなどの自己負担
- 転職に伴う空白期間の生活費と社会保険料
- 勤務地限定・短時間勤務による給与や昇格への影響
額面年収が上がっても、通勤時間の増加や介護サービス費の追加で家計が悪化する場合があります。年収だけでなく、介護を含めた毎月の可処分時間と支出で判断しましょう。
仕事と介護を両立する相談先
| 相談内容 | 相談先 |
|---|---|
| 介護サービス、地域資源、日常生活の困りごと | 地域包括支援センター |
| 介護保険の申請・利用手続き | 市区町村の介護保険担当課 |
| ケアプランとサービスの組み合わせ | ケアマネジャー |
| 介護休業・休暇、残業制限、不利益取扱い | 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室) |
| 介護休業給付金 | ハローワーク |
| 自社制度、異動、勤務時間の調整 | 勤務先の人事・総務・相談窓口 |
介護の相談と雇用制度の相談は窓口が異なります。地域包括支援センターには働き方の希望を伝え、会社には介護サービスを含む勤務継続の見通しを伝えると、両方の調整が進みやすくなります。
介護しながらの転職に関するよくある質問
親の介護中であることを履歴書へ書く必要はありますか?
履歴書は職歴や応募資格を伝える書類であり、介護の詳しい状況を書くことが主目的ではありません。空白期間の理由を補足する場合や、入社直後から勤務条件の調整が必要な場合は、勤務への影響と現在の体制を簡潔に記載・説明します。
面接で介護について聞かれたら、どう答えればよいですか?
通常勤務できる時間、難しい勤務、介護サービスと家族分担、緊急時の対応を事実に沿って答えます。家族の病名や私生活を必要以上に詳しく説明するより、仕事への影響を具体化することが重要です。
介護を理由に転職したら、また不利になりますか?
介護そのものより、応募先でも同じ問題が起きないかが確認されます。介護体制、希望条件、長期就業の見通しを示し、これまでの経験と応募先での貢献を中心に説明してください。
入社直後でも介護休暇は取れますか?
2025年4月から、勤続6か月未満であることを理由に介護休暇の対象外とする仕組みは廃止されました。ただし、労使協定により週の所定労働日数が2日以下の労働者を対象外にできるほか、休暇が有給か無給かは会社規定によります。
入社直後でも介護休業は取れますか?
会社が労使協定を締結している場合、継続雇用1年未満の労働者は対象外になることがあります。介護休暇とは条件が異なるため、内定承諾前に就業規則または人事へ確認してください。
要介護認定を受けていなくても介護休業を使えますか?
介護保険の要介護認定は必須条件ではありません。育児・介護休業法上の「2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態」に該当するかを確認します。会社から証明書類を求められた場合は、必要な範囲を確認してください。
介護休業中に転職活動をしてもよいですか?
介護休業は、現在の会社へ復帰し仕事と介護を両立するための制度です。転職を決めている場合は、休業の申出内容や介護休業給付金への影響を含め、会社とハローワークへ確認してください。休業制度の目的と異なる利用にならないよう注意が必要です。
正社員から契約社員やパートへ変えるべきですか?
雇用形態を変えれば必ず両立しやすくなるとは限りません。勤務時間、収入、社会保険、契約更新、制度利用条件を比較し、正社員のまま短時間勤務や勤務地限定へ変更できないかも確認します。
公的情報・相談先
- 厚生労働省「介護休業制度特設サイト」:介護休業、介護休暇、勤務時間の制度
- 厚生労働省「法改正のポイント」:2025年4月施行の介護離職防止策
- 厚生労働省「介護休業」:対象者、対象家族、93日・3回、給付金
- 厚生労働省「介護休暇」:取得日数、時間単位取得、対象者
- 厚生労働省「よくあるお問い合わせ(労働者の方へ)」:要介護状態の判断、制度対象者
- 厚生労働省「転勤についての配慮」:家族介護中の配置変更に関する事業主の配慮
- ハローワークインターネットサービス「雇用継続給付」:介護休業給付金の要件と申請
- 厚生労働省「その他・相談窓口」:労働局、ハローワーク、地域包括支援センター
まとめ
介護しながら転職することは可能ですが、最初に行うべきことは退職ではありません。現在の会社で介護休業、介護休暇、短時間勤務、残業免除、異動を利用できないか確認し、介護サービスと家族分担を整えます。
転職が必要な場合は、介護予定を見える化し、「転勤なし」「定時退社」「月1回の通院付き添い」など、継続勤務に必要な条件を具体化してください。求人票の制度名だけでなく、入社直後の利用可否、部署の残業実態、テレワークやフレックスの運用まで確認します。
特に、転職直後は介護休業や短時間勤務等を利用できない場合があります。介護休暇との条件の違いを理解し、内定承諾前に人事へ確認することが大切です。
応募先へ介護の事情を伝えるときは、家族の詳しい病状より、勤務への影響、現在の介護体制、必要な調整をセットで説明します。介護を一人で抱えず、会社、地域包括支援センター、ケアマネジャー、家族を含む複数の支援先を使いながら、長く続けられる働き方を選びましょう。