転職先を選ぶとき、「離職率が高い業界は避けるべき?」と不安になる人は少なくありません。結論から言えば、業界の離職率は注意信号にはなりますが、それだけでブラック企業かどうかは判断できません。雇用形態の構成や契約満了、定年、出向なども数字に含まれるためです。
この記事では、厚生労働省「雇用動向調査」の最新年次データを基に、離職率が高い業界をランキングで紹介します。さらに、一般労働者とパートタイム労働者の差、数字を読むときの注意点、応募企業の定着状況を確かめる方法まで解説します。
- 2026年8月29日時点で利用できる最新の通年結果は、2024年の雇用動向調査
- 常用労働者全体の離職率が最も高い産業は「宿泊業,飲食サービス業」の25.1%
- 全産業の離職率は14.2%だが、一般労働者は11.5%、パートタイム労働者は21.4%
- 転職判断では、業界平均よりも「応募先企業・配属予定部門・雇用形態」の数字を優先する
この記事でわかること
- 離職率が高い業界の最新ランキング
- 離職率の定義と、間違えやすい数字の違い
- 上位業界の数字が高くなる背景
- 企業単位の離職リスクを確認する方法
- 面接で使える具体的な質問
【2026年版】離職率が高い業界ランキング
2026年8月29日時点で、厚生労働省の結果一覧に掲載されている最新の通年結果は、2024年(令和6年)雇用動向調査です。2025年分は上半期結果まで公表されていますが、半年間の率と1年間の率は条件が異なるため、ここでは通年同士を比較できる2024年調査を使用します。
同調査は、16大産業に属し、5人以上の常用労働者を雇用する全国の事業所から抽出した約1万5,000事業所を対象にしています。以下は「常用労働者計」の離職率が高い順です。
| 順位 | 産業 | 常用労働者計 | 一般労働者 | パートタイム労働者 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 宿泊業,飲食サービス業 | 25.1% | 18.1% | 29.9% |
| 2位 | サービス業(他に分類されないもの) | 20.3% | 19.0% | 23.8% |
| 3位 | 生活関連サービス業,娯楽業 | 19.0% | 16.9% | 21.9% |
| 4位 | 卸売業,小売業 | 15.1% | 10.7% | 21.3% |
| 5位 | 医療,福祉 | 13.8% | 13.1% | 15.7% |
| 6位 | 不動産業,物品賃貸業 | 13.5% | 12.6% | 17.4% |
| 7位 | 教育,学習支援業 | 13.1% | 8.8% | 22.2% |
| 8位 | 学術研究,専門・技術サービス業 | 11.1% | 10.3% | 19.5% |
| 9位 | 情報通信業 | 10.2% | 9.8% | 20.1% |
| 9位 | 運輸業,郵便業 | 10.2% | 9.1% | 15.8% |
| 11位 | 建設業 | 10.0% | 9.7% | 15.9% |
| 12位 | 製造業 | 9.6% | 8.8% | 15.3% |
| 13位 | 鉱業,採石業,砂利採取業 | 9.1% | 9.1% | 7.3% |
| 14位 | 電気・ガス・熱供給・水道業 | 8.8% | 7.8% | 19.9% |
| 15位 | 金融業,保険業 | 8.0% | 7.4% | 14.1% |
| 16位 | 複合サービス事業 | 7.8% | 7.0% | 12.0% |
| 産業計 | 14.2% | 11.5% | 21.4% | |
出典:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」、「産業別の入職と離職」表4-2
総数だけを見ると見落としが生じます。例えば教育,学習支援業の離職率は全体で13.1%ですが、一般労働者は8.8%、パートタイム労働者は22.2%です。自分が応募する雇用形態に近い列を確認しましょう。
離職率とは?計算方法と調査の範囲
雇用動向調査における離職率は、次の式で算出されます。
離職率 = 調査期間中の離職者数 ÷ 1月1日時点の常用労働者数 × 100
ここでいう常用労働者は、期間を定めずに雇われている人だけではありません。1か月以上の期間を定めて雇われている人も含まれます。また、離職者には退職者と解雇された人のほか、他企業への出向者や出向元への復帰者も含まれます。同一企業内の別事業所への転出は含まれません。
したがって、この離職率は「今年採用された100人のうち何人が1年以内に辞めたか」を示す数字ではありません。年初の在籍者数を分母とする、事業所全体の労働移動を表す指標です。
定義の詳細は、厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」の「主な用語の定義」で確認できます。
「離職率」と「新卒3年以内離職率」は別の指標
新卒3年以内離職率は、ある年に就職した新卒者が3年以内に離職した割合を追う「同時期入社者」の指標です。一方、雇用動向調査の離職率は、1年間に事業所から離れた常用労働者の割合です。対象期間と分母が違うため、数値を横並びにはできません。
| 指標 | 主にわかること | 注意点 |
|---|---|---|
| 産業別の年間離職率 | 業界全体の労働移動の大きさ | 個別企業や中途入社者の定着率ではない |
| 新卒3年以内離職率 | 新卒採用者の早期離職 | 中途採用者にはそのまま当てはまらない |
| 企業が公表する離職率 | その企業の定着状況 | 分母、期間、対象雇用形態が企業ごとに異なる場合がある |
| 定着率 | 一定期間後に残っている割合 | 同じ分母・期間でなければ「100-離職率」にはならない |
離職率が高い業界はブラック企業が多い?
業界の離職率が高いことと、その業界の企業がブラックであることは同義ではありません。業界平均には、企業ごとの労務管理だけでは説明できない複数の要素が混ざっています。
一般労働者とパートタイム労働者の構成が違う
2024年の産業計では、一般労働者の離職率が11.5%、パートタイム労働者が21.4%でした。パートタイム労働者の割合が高い産業では、常用労働者計の離職率も高く見えやすくなります。正社員として応募する人は、産業全体だけでなく一般労働者の数字も確認する必要があります。
自己都合退職だけを数えているわけではない
離職には、転職目的の自己都合退職だけでなく、定年、契約期間の満了、経営上の都合、出向などが含まれます。雇用契約や年齢構成が異なる業界を、総離職率だけで比較すると判断を誤る可能性があります。
大分類の中に性質の異なる仕事が含まれる
「サービス業(他に分類されないもの)」や「生活関連サービス業,娯楽業」は幅の広い産業分類です。同じ大分類でも、職種、事業所、勤務時間、繁閑の差によって働き方は大きく異なります。大分類の数値を、そのまま個別企業へ当てはめることはできません。
率が高くても、母数が小さい企業では振れ幅が大きい
社員5人の部署で1人が退職すれば、単純計算では20%です。人数が少ない企業では、1人の入退職で率が大きく動きます。離職率を確認するときは、割合だけでなく「対象人数」と「離職者数」もセットで尋ねましょう。
ランキング上位5業界の見方と確認ポイント
1位:宿泊業,飲食サービス業|25.1%
一般労働者18.1%に対し、パートタイム労働者は29.9%です。総数の高さには就業形態の構成が影響しています。応募時は、正社員と非正規を分けた定着状況に加え、勤務シフト、繁忙期の残業、休日の決まり方、店舗間異動の範囲を確認してください。
2位:サービス業(他に分類されないもの)|20.3%
一般労働者の離職率は19.0%で、16産業の中で最も高い水準です。ただし、この分類には多様な事業が含まれます。「サービス業だから」と一括りにせず、会社の具体的な事業、請負・派遣などの契約構造、配属先の変更条件、正社員の退職理由を調べることが重要です。
3位:生活関連サービス業,娯楽業|19.0%
一般労働者16.9%、パートタイム労働者21.9%で、どちらも産業計を上回ります。理美容、洗濯、旅行、娯楽など異なる分野を含むため、業界平均だけでは勤務実態を特定できません。予約や来客に応じた勤務の変動、土日祝日の休み方、歩合給の条件、研修費の負担を確認しましょう。
4位:卸売業,小売業|15.1%
一般労働者10.7%に対し、パートタイム労働者は21.3%です。正社員転職を検討する場合、総数だけを見て過度に悲観する必要はありません。店舗勤務か本部勤務か、職種、転勤範囲、営業時間、欠員時の応援体制によって条件が変わるため、配属予定先の情報を取りましょう。
5位:医療,福祉|13.8%
産業計の14.2%をわずかに下回るものの、16産業中では5位です。一般労働者は13.1%、パートタイム労働者は15.7%でした。施設や職種による差が大きいため、夜勤回数、人員配置、資格職ごとの定着状況、休暇取得時の代替要員、身体的・心理的負担への支援体制を具体的に確認しましょう。
離職率が高い業界へ転職するときの判断手順
業界ランキングは、候補を機械的に除外するためではなく、次に何を調べるべきかを決める入口として使うのが適切です。
- 自分の雇用形態に近い数字を見る:正社員なら一般労働者、短時間勤務ならパートタイム労働者の列を確認します。
- 同じ業界の複数社を比較する:1社だけでは、その数字が業界特性なのか企業固有の問題なのか判断できません。
- 企業の離職者数と分母を確認する:率だけでなく、対象者数、離職者数、期間、対象雇用形態をそろえます。
- 配属予定部門まで掘り下げる:全社平均が低くても、特定部門だけ高い可能性があります。
- 離職理由と改善策を確認する:数字の高低だけでなく、会社が課題を把握し、対策を実行しているかを見ます。
- 自分の希望条件と照合する:シフト、休日、報酬、仕事内容、勤務地、成長機会の優先順位に照らして判断します。
応募企業の定着状況を調べる5つの方法
1. 「しょくばらぼ」で公表情報を確認する
厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」では、企業の勤務実態や採用状況に関する職場情報を検索・比較できます。企業によって掲載項目は異なりますが、採用・定着状況、平均継続勤務年数、所定外労働時間、有給休暇、育児休業、研修制度などを確認できます。
2. 求人票と採用ページの数字を照合する
「定着率95%」などの記載があれば、対象期間、対象者、計算方法を確認します。全社員を対象にした1年間の定着率と、新卒入社者の3年定着率では意味が違います。採用ページと求人票で労働時間や休日数に差がないかも見てください。
3. 求人が出た理由を確認する
募集が増員なのか欠員補充なのかで、受け止め方は変わります。欠員補充でも直ちに問題とは限りませんが、同じ職種を長期間にわたり繰り返し募集している場合は、退職理由や採用後の支援体制まで確認しましょう。
4. 口コミは「事実の仮説」として読む
口コミは投稿者の部署、職種、在籍時期によって見え方が異なります。評価点だけで断定せず、同じ内容が複数時期に繰り返されているか、残業代、休日、評価、異動などの具体的な記述があるかを見ます。口コミで得た疑問は、選考で確認する質問へ変換しましょう。
5. 内定後は書面の労働条件を確認する
離職率が低くても、自分に合わない条件なら長く働けません。労働条件通知書などで、契約期間、就業場所と業務の変更範囲、所定労働時間、休日、賃金、固定残業代、試用期間、退職に関する事項を確認し、不明点は入社承諾前に解消します。
面接で使える「離職率」の逆質問
「離職率は何%ですか」とだけ聞くと、全社・全雇用形態を合算した数字が返ってくることがあります。次のように、期間と対象を指定して質問すると比較しやすくなります。
- 直近3年間について、正社員の在籍者数と離職者数を年度別に教えていただけますか。
- 配属予定部門で、入社1年以内に退職した中途採用者は何人いますか。
- 今回の募集は増員でしょうか、欠員補充でしょうか。
- 退職理由として多いものと、それに対して改善したことを教えてください。
- 同じ職種で長く活躍している方に共通する特徴は何ですか。
- 繁忙期の残業時間、休日出勤の頻度、代休の取得状況を教えてください。
すべての数字を開示できない企業もあります。ただし、質問の意図を理解し、可能な範囲で事実や改善策を説明してくれるかどうかは、情報開示の姿勢を判断する材料になります。
離職率と一緒に見るべき指標
離職率単独では職場の良し悪しを判定できません。次の指標を組み合わせると、勤務実態を立体的に捉えやすくなります。
| 確認項目 | 読み取れること | 確認時のポイント |
|---|---|---|
| 平均勤続年数 | 長期在籍の傾向 | 創業年数や従業員の年齢構成も考慮する |
| 入社1年以内の離職者数 | 採用時のミスマッチ | 中途・新卒、職種別に確認する |
| 月平均所定外労働時間 | 時間外労働の実態 | 全社平均だけでなく繁忙期と配属先も聞く |
| 有給休暇の取得日数・取得率 | 休暇を利用できる実態 | 付与日数や職種差も確認する |
| 育児休業の取得・復職実績 | ライフイベントとの両立 | 対象者数と男女別の実績を見る |
| 研修・1on1・評価制度 | 入社後の支援と成長環境 | 制度の有無ではなく実施頻度を聞く |
| 基本給・固定残業代・賞与 | 報酬の透明性 | 総額ではなく内訳と算定基準を確認する |
離職率が高い業界に向いている人・慎重に考えたい人
離職率の高い業界にも、自分の適性や希望と合う職場はあります。一方、「求人が多いから」「すぐ内定が出たから」だけで決めるのは危険です。
選択肢に入れやすい人
- 勤務時間や休日のパターンを理解し、生活との両立を具体的に想像できる
- 仕事内容そのものに関心があり、必要な対人対応や体力面も受け入れられる
- 応募先の研修、評価、配置、キャリアパスを確認できている
- その環境で得たい経験と、次のキャリアへのつながりを説明できる
慎重に検討したい人
- 土日休みや勤務時間の固定が必須なのに、シフト条件を確認していない
- 給与の内訳や残業代、休日数など基本条件が曖昧なまま選考が進んでいる
- 早く内定が欲しいという焦りから、面接で感じた疑問を放置している
- 業界への関心よりも「未経験歓迎」という言葉だけで応募している
離職率が高い業界に関するよくある質問
離職率は何%から高いと判断できますか?
すべての企業に共通する絶対的な基準はありません。2024年の産業計14.2%は参考になりますが、一般労働者かパートタイム労働者か、企業規模、対象期間、職種をそろえて比較する必要があります。応募先については、同業・同規模・同職種の企業と比べるのが実務的です。
離職率が低ければホワイト企業ですか?
必ずしもそうではありません。人材が定着している可能性はありますが、年齢構成、地域の転職機会、雇用慣行など別の要因も考えられます。労働時間、休暇、賃金、評価制度、ハラスメント対策、採用後の支援と合わせて判断してください。
企業が離職率を教えてくれない場合は避けるべきですか?
非開示だけで即断はできません。企業規模が小さく個人が推測される、社内で率を算出していないといった事情もあります。その場合は「直近の離職者数」「今回の募集理由」「配属先の在籍年数」「入社1年以内の退職事例」など、答えられる事実へ質問を変えましょう。
離職率が高い業界は転職先から除外すべきですか?
一律に除外する必要はありません。業界平均が高くても、個別企業の正社員定着率が高く、希望条件に合う場合があります。反対に、業界平均が低くても、特定企業や部門に問題があるケースはあり得ます。ランキングは調査の優先順位を決めるために使いましょう。
まとめ:業界ランキングを入口に、企業単位で確かめよう
最新の通年統計では、離職率が最も高い産業は宿泊業,飲食サービス業の25.1%、次いでサービス業(他に分類されないもの)の20.3%、生活関連サービス業,娯楽業の19.0%でした。一方、産業計は14.2%で、一般労働者11.5%とパートタイム労働者21.4%には大きな差があります。
大切なのは、「離職率が高い業界=悪い業界」と短絡しないことです。同じ期間・分母・雇用形態で数字を比べ、応募企業と配属予定部門の実態を確認することで、統計を転職失敗の予防に役立てられます。
まずは候補企業を3社ほど並べ、採用・離職者数、残業、休暇、募集理由、入社後の支援を同じ項目で比較してみてください。数字と説明の両方に納得できる会社を選ぶことが、長く働ける職場に近づく一歩です。