「内定が出たけれど、提示された年収が思ったより低い…」 「本当はもっと欲しいけれど、交渉して内定取り消しになったら怖い」
転職活動の最終局面で、多くの方がこの壁に直面します。しかし、知っておいてください。提示された年収は「確定事項」ではなく、あくまで企業側からの「最初の提案(オファー)」に過ぎません。
適切なロジックと伝え方さえ間違えなければ、年収交渉は決して失礼な行為ではなく、むしろビジネスパーソンとしての交渉能力を証明する機会にもなります。実際、戦略的な交渉により、提示額から10〜20%のアップに成功する事例は珍しくありません。
本記事では、実際に年収を大幅アップさせた成功実例と、誰でも使える「交渉メールのテンプレート」を公開します。
なぜ「年収20%アップ」が可能なのか?
転職で年収が上がるメカニズムは主に3つです。交渉の前に、自分がどのパターンで攻めるべきかを理解しましょう。
市場価値の補正(マーケットバリュー) 現職の給与水準が業界平均より低い場合、それを「適正価格」に戻すだけで大幅アップが見込めます。
業界・職種の変更(利益率の差) 利益率の高い業界(IT、金融、商社など)や、給与水準の高い職種へスライドする場合、能力そのままでベース給与が上がります。
希少性の証明(即戦力・マネジメント) 「教育コストがかからない」「プレイングマネージャーができる」など、企業が最も欲しがっているポイントと合致した場合、企業は予算の上限を出してでも確保しようとします。
【実録】年収交渉に成功した3つの事例
実際に交渉を行い、提示額からのアップを勝ち取った3人の実例を紹介します。
事例1:30歳 男性 システムエンジニア
【結果】 提示550万円 → 交渉後 650万円(+100万円/約18%UP)
状況: 二次請けSIerから自社開発企業への転職。内定時のオファーは現職維持の550万円。
交渉の切り札: 「他社からのオファー額」と「マネジメント経験」。
戦略: 実は競合B社から630万円のオファーが出ていた。「第一志望は御社だが、B社の評価額と乖離があり迷っている」と正直に相談。さらに「リーダー経験があり、採用後のオンボーディングコストが低い」点をアピールし、B社を上回る650万円を引き出した。
事例2:26歳 女性 法人営業
【結果】 提示420万円 → 交渉後 500万円(+80万円/約19%UP)
状況: 人材業界からSaaS業界へ。未経験要素があるため、現職並みの420万円提示。
交渉の切り札: 「達成率」と「入社後の再現性」。
戦略: 「未経験だが、現職では目標達成率120%を3年継続した」実績を数値で提示。「御社の商材でも、同様のプロセスで早期に成果を出せる」という仮説をプレゼンし、ポテンシャル枠ではなく即戦力枠としての評価に修正してもらった。
事例3:35歳 男性 Webマーケター
【結果】 提示700万円 → 交渉後 700万円+サインオンボーナス100万円(実質年収UP)
状況: 事業会社からベンチャーへ。社内規定(給与テーブル)の上限が700万円で、これ以上のベースアップは無理と言われた。
交渉の切り札: 「一時金(サインオンボーナス)」の打診。
戦略: 月給のアップが難しいと悟り、切り口を変更。「転職に伴う引っ越しやPC環境整備などの支度金として考慮してほしい」と入社時の一時金を交渉。企業側も「固定費(給与)はずらせないが、一時金なら経費処理できる」と合意し、100万円を獲得。
そのまま使える!年収交渉メールテンプレート
交渉は電話や面接の場で行うと感情的になりやすいため、冷静に条件を整理できる「メール」で行うのが鉄則です。 以下のテンプレートを自分の状況に合わせて調整し、オファー面談の後や内定承諾の前に送信してください。
パターンA:市場価値や実績を根拠にする場合
最もスタンダードなパターンです。「入社したい」という熱意を伝えつつ、条件面だけが懸念点であることを伝えます。
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件名: 内定のご連絡のお礼と労働条件のご相談(氏名)
本文: 〇〇株式会社 人事部 採用担当 〇〇様
お世話になっております。(氏名)です。 先日は内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。 評価していただいたこと、大変光栄に存じます。
いただいた労働条件通知書を拝見いたしました。 第一志望である貴社でぜひ力を尽くしたいと考えておりますが、 年収条件について、一点ご相談させていただきたく存じます。
今回ご提示いただいた年収〇〇万円ですが、 現職の年収(〇〇万円)および、私のこれまでの〇〇の実績や 市場の平均給与水準を鑑みますと、 恐縮ながら〇〇万円程度を希望しております。
貴社への入社意欲は非常に高く、もしこの点を考慮いただけるようでしたら、 即決で内定をお受けしたいと考えております。
予算や社内規定のご都合もあるかと存じますが、 ご検討いただけますでしょうか。
何卒よろしくお願い申し上げます。
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パターンB:他社のオファー額を引き合いに出す場合
強力なカードですが、嘘をつくとバレるリスクがあるため、本当に他社の内定を持っている場合のみ使用してください。
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件名: 労働条件についてのご相談(氏名)
本文: (前略・お礼)
入社にあたり、提示年収についてご相談がございます。 正直に申し上げますと、現在選考が進んでいる他社様より、 年収〇〇万円のオファーをいただいております。
業務内容や社風を含め、私自身は貴社を第一志望と考えておりますが、 家族とも相談の上、将来的な生活設計を考えますと、 提示額との差に迷いが生じているのが正直なところです。
もし貴社にて、他社同等の〇〇万円、あるいはそれに近い条件をご検討いただけるようでしたら、 他社を辞退し、貴社への入社を即断させていただきます。
私事の都合で大変恐縮ですが、ご検討のほどお願い申し上げます。
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パターンC:ベースアップが無理なら「サインオンボーナス」
ベース給与の交渉が決裂しそうな時や、企業の給与テーブルが厳格な場合の切り札です。
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本文: (前略)
ご提示いただいた年収額につきまして、貴社の規定やご事情、 十分に理解いたしました。
私としても貴社の一員として貢献したい気持ちが強くございます。 そこで、月々の給与額はそのままで構いませんので、 入社時の「支度金(サインオンボーナス)」という形で、 〇〇万円程度を支給いただくことは可能でしょうか?
転職に伴う転居費用や環境整備のため、初期費用がかさむ見込みがあり、 この点をサポートいただけますと、安心して入社を決断できます。
無理を申し上げ恐縮ですが、 入社への最後の後押しとしてご検討いただけますと幸いです。
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交渉前に準備すべき「3つの武器」
丸腰で交渉しても「ただのワガママ」と捉えられます。交渉を成功させるためには、以下の3つの武器を揃えてください。
自分の市場価値の客観的データ 転職エージェントや口コミサイト(OpenWorkなど)を使い、自分の職種・年代・スキルの平均年収を把握しておきます。「相場は600万なのに500万はおかしい」という論拠になります。
具体的な貢献プラン
「入社したらこれをやります」という未来の利益を語ります。「御社の課題である〇〇を、私の経験で解決できます」と伝えることで、給与はコストではなく投資だと認識させます。
「もしダメなら辞退する」という覚悟(または他社の内定) 最も強い交渉力を持つのは「いつでも席を立てる人」です。他社の内定を持っておくことが、精神的余裕と強気な交渉を生みます。
絶対にやってはいけないNG行動
最後に、交渉を破談にさせないための注意点です。
内定承諾「後」に交渉する
これはマナー違反であり、契約トラブルの元です。必ず「内定承諾書」にサインする前に行いましょう。
横柄な態度をとる
「他社はもっと出しますよ?」と上から目線で言うのはNG。あくまで「御社に入りたいが、条件だけがネック」というConsultative(相談的)"な姿勢を崩さないでください。
嘘をつく
持っていない他社の内定をでっち上げたり、現年収を多めに申告したりするのは絶対にやめましょう。源泉徴収票の提出で必ずバレます。
まとめ:交渉は「自分という商品」の最後のプレゼン
日本人はお金の話を避ける傾向にありますが、ビジネスにおいて給与交渉は正当な権利です。 むしろ、入社前から自社の利益(自分の給与)のために論理的に交渉できる人材は、入社後も顧客とタフな交渉ができると期待されます。
「御社で活躍したいからこそ、納得してスタートしたい」
この想いをテンプレートに乗せて、勇気を出して送信ボタンを押してください。そのワンクリックが、あなたの生涯年収を数千万円変えるかもしれません。